*   

「やはりダメか」

抑揚のない声音が小さく届く。

「ごめん」

僕はそう応えるしかなかった。

突然目の前に現れた、きつね面を着けた男。それだけでも充分に奇妙なことなのに。

「我の名を思い出せ」

初対面の男はそう僕に告げたのだ。

2006.12.09up

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