そこは『生』もなく　『死』もない世界
ただ　何者をも拒絶することのない
月がその光で癒し続ける
彼が癒されたいのは　戦いに疲れた身体か
それとも　愛に疲れた心か

そこは『希望』もなく　『絶望』もない世界
ゆえに　彼の未来はここにはなく
月は彼の墓標すら拒絶する
彼が望むものは　戦いの果ての勝利か
それとも　愛念の果ての敗北か

そこは束の間の世界
彼は帰らなければならない　
黒き翼を持つゆえに　宿命が求める戦いの中へ
黒き翼を持ちながら　運命が巡り合わせた情愛へ

黒き翼を持ちながら　愛は　彼に力を与え
黒き翼を持つゆえに　愛は　彼の枷となる

彼は　戦い続けるだろう
希求する心のままに　立ち塞がる絶望を打ち砕くまで
あるいは
死が　やさしく　彼の希望を取り上げるその日まで

ただ　いまだけは　癒しの光りに抱かれて　
つかの間の　休息を
未来に立ち向かう　力がその身に満ちるまで